ジャングルジムの真ん中で
あの子が泣いていたんだ
すりむいたひざを抱えて
「おいていかないで」って

そこにはもう影しかない

ブランコを揺らしながら
どこまでも飛べる気がしたんだ
せいぜい360°の世界で
景色も変わらないのに

そこにはもう影しかない

コンクリートに埋まる
あらゆる影たちが
夕暮れに抜け出して
遊んで笑って泣いている

泣き声さえも影となる
夏草に揺れる茜色

さよならを探しにいきます
夕暮れまで探さないで下さい

夕暮れなど来なければよかった
そこにはもう影しかない




* 121012